【学長訓辞】入学生の皆様へ

入学生の皆様へ

新入生の皆さん,入学おめでとうございます。
今年は春の到来が早く,新潟市の桜のつぼみは大きく膨らみ,開花は今か今かと待たれています。皆さんも,今日から始まる歯科保健・技術にかかわる専門教育への期待に胸を膨らませていることと思います。
皆さんが高齢世代に突入する頃には人生100年時代が到来,すなわち「平均寿命100歳」を達成しているでしょう。これからの医学は,さらに加速度的に進歩していくことに疑問の余地はありません。しかしながら,黙って病院に通うだけでは健康的な100歳を迎えることはできません。国民一人ひとりが絶え間ない自己健康管理,健康習慣を身につけることが条件となります。その際,人生のあらゆるライフステージにおいて専門家による支援は大きな助けとなります。
本日皆さんが入学した明倫短期大学は,学士称号取得プログラムを併設する,歯科衛生士・歯科技工士国家資格免許取得を目指す医療人材の育成機関です。歯や口は消化器官の第1番目に位置する重要な臓器です。歯を失い良く噛めない高齢者では,早期に死亡する確率は2.5〜3倍,認知症の発症は3〜4倍,また,寝たきりとなる確率は10倍となることからも,歯を護り,食べる機能を維持することの重要性が理解できます。歯を失う原因のほとんどがむし歯と歯周病なので,歯を失いはじめる年代からの支援では遅すぎます。生まれた時から終末期に至るまで,すなわち,何ら病気がない健康な人も含む全ての人々に関わっていくのが歯科衛生士の職責ということになります。さらに,成人期以降では歯周病部位からの感染が肥満・糖尿病,心内膜炎,脳卒中など生活習慣病の一因となることもわかっています。また,要介護高齢者や有病者・術直後患者の誤嚥性肺炎予防のための口腔清掃介助も同じく歯科衛生士の重要な役割です。
とは言え,年齢と共に抵抗力(免疫力)が衰える動物の宿命として,どうしても歯を失うことが避けられない現実があります。形態の精緻な回復に加え,咀嚼・摂食機能を回復させる入れ歯(補綴装置)であることが必須で,コンピューター技術を活用するAI(人工知能)がさらに進化するとしても,患者の感覚的な食べる機能に合わせていく専門職の手が不可欠でありつづけます。その人工咀嚼器官の製作,調整に携わるのが歯科技工士です。サッカーの試合に例えて言うと「攻撃は最大の防御なり」,歯科衛生士が積極的に予防処置・指導をおこなう攻撃的なディフェンダー,歯科技工士が堅固なスイーパーでありゴールキーパーであると言えます。そしてミッドフィルダーである歯科医師や医師とよく連携のとれたチームが常に勝利の美酒に酔うことができます。すなわち,「人生100歳時代」を導くために,私たちは一つの重要なカギを握る医療チームとなります。
もうすぐ元号が替わり,今まさに,令和元年とともに新しい一歩が始まります。社会の一員として,皆さんも主体性をもって新しい時代を切り拓いていきましょう。今日から,志を同じくする君たちが一同に会し,勉学のみならずクラブ活動など積極的に交流を深めていきましょう。また,ボランティアや社会活動に積極的に関わる機会は,とても貴重な学びのチャンスとなります。皆さんがこれから充実した大学生活を送ることができるためには,何より心身の健康が大切です。実りある大学生活となるように,我々教職員は全力を挙げて,皆さんをサポートしていきます。開校して60年,地域歯科保健において多くの優れた人材を排出してきました。皆さんには,誇りを持ってこの明倫短期大学に学び,連綿と続く「明倫山脈」の新たな一角を成す地域リーダーとなられんことを祈念して,歓迎の言葉といたします。

平成31年4月6日
明倫短期大学長 宮崎秀夫